これから税理士試験に挑戦する方は、最初の科目として簿記論か簿財同時かで迷っているところでしょう。
簿財同時の学習時間の目安は?
働きながらの2科目同時学習って現実的?
こんな悩みありませんか?
筆者も日商簿記1級合格後に最初の科目として、働きながら簿財同時学習を経験しました。
その経験から今になって思うことについて書いてみます。
この記事でわかること
- 学習開始時点のレベル別学習時間の目安
- 働きながらの簿財同時学習は現実的か?
- 会計科目の受験資格撤廃の影響についての考察
- 筆者の失敗談
簿財同時学習は可能
まずは結論。
働きながらの簿財同時学習はスタート時点の学習レベルによっては可能です。
具体的には
・講座開始時に日商簿記1級合格済み又は合格レベルなら可能
・講座開始時に日商簿記2級レベルなら厳しい
となります。
日商簿記1級合格レベルの場合
日商簿記1級から簿財の勉強時間
日商簿記1級の学習範囲を終えているなら、働きながらの簿財同時学習は可能。
勉強時間のほとんどは財務諸表論に充てることになります。
年間の勉強時間の目安は約600時間くらいでしょう。
1日2時間なら働きながらでも現実的ですね
ただし簿財両方の講座を申込みするのはもったいないです。
簿記論は過去問メインでOK
簿記論に関しては日商簿記1級の学習範囲とほとんど同じ。
ですから簿記論は講座を申込みせずにいきなり過去問演習から始めましょう。
簿記論は日商簿記1級に比べて総合問題のボリュームがかなりありますが。
日商簿記1級合格レベルであればほぼ解けるはず。
ボリュームは演習を繰り返すうちに慣れます。
簿財同時は勉強時間の配分に注意
日商簿記1級合格レベルなら、簿記論のインプット講義に週2コマ使うのはもったいないです。
はやめに総合問題に慣れて、浮いた時間は財務諸表論の勉強に充てましょう。
簿記論はとにかく解く順番が大事です。
財務諸表論は専門学校を利用すべし
財務諸表論は理論があるので専門学校の講義を受けましょう。
会計科目は改正論点もないので、価格の安いスタディングをおすすめしています。
財務諸表論は理論を重視する
日商簿記1級合格レベルなら財務諸表論の計算はかなり楽に感じるはずです。
簿記論の問題をやっておけばトレーニングも軽く流す程度で大丈夫。
財表特有の表示科目と注記関連はしっかりやりましょう。
計算は軽めにして理論を重点的にやるべき。
財表の理論はキーワードを使いながら作文で説明できれば受かります。
一字一句暗記というよりはキーワードを中心に、他人に説明できるようになるイメージで暗記しましょう。
直前期の答練は必ず受けよう
とにかく日商簿記1級合格レベルであれば、簿記論のインプット講義は省略でOK。
「簿記論特有の論点」というのも多少あります。
それを補うために直前期の答練だけは専門学校で受けましょう。
大原・TACは受験者数も多く自分の立ち位置がわかるので、この2校がおすすめです。
とにかくアウトプット重視
答練を回せば簿記論特有の論点はカバー可能。
日商簿記1級合格レベルであれば、講座開始時に相当のアドバンテージがあります。
その分簿記論のインプットは削って財務諸表論のインプットと理論に充てましょう。
日商簿記2級レベルから簿財
働きながら2科目同時は厳しい
個人的に日商簿記2級レベルから働きながらの簿財同時学習はおすすめしません。
年間の勉強時間は1,000時間以上必要になります。
専門学校のパンフレットでは「簿財同時学習は相乗効果で〜」と書かれているでしょう。
さらに「初年度で2科目合格できれば残り3科目」という欲望が生まれます。
確保できる時間から冷静に判断しよう
でも冷静に考えてください。
簿財同時学習した場合、講義だけで週4コマ。
1コマ2時間半だとして週10時間です。
働きながら1日3時間、土日にもう少し勉強するにしても週25時間前後。
勉強時間の半分をインプットにつかっていたら合格はかなり厳しいです。
簿記2級の難易度とは桁違い
厳しめに言うと税理士試験は日商簿記2級までの勉強とは次元が違いますよ。
最初は誰だってできると思って簿財同時学習を申し込みます。
だけど最後の講義まで残っているのはほんの数%です。
本試験まで辿り着くまでに挫折する受験生は毎年たくさんいます。
相乗効果は確かにあるが
同時学習はたしかに相乗効果はあります。
ただ日商簿記2級の学習に比べて1つ1つの論点の難易度もあがりますし。
簿記2級までは勉強時間も1日1時間程度だったのではないでしょうか?
それがいきなり
- 理解するのが難しくて
- 1日の勉強時間が3倍近く必要
というのはかなり厳しいですよ。
簿財同時は相当な覚悟が必要
簿記2級までは「勉強が楽しい」ですが、簿記1級以上は「勉強が辛い、苦しい」に変わります。
仕事が終わって疲れて帰宅して365日、本当に続ける覚悟はありますか?
もちろん日商簿記2級から簿財同時学習で同時合格する方も存在します。
ただ相当な覚悟がないと最後の講義まで残ることすら難しいという事実は申込み前に知っておいてほしいのです。
同時学習するなら覚悟を持って申し込みしよう。
着実に1科目ずつの選択もアリ
専門学校もビジネスです。
簿記論1科目より簿財同時のほうが料金が…
そういうことです。
日商簿記2級レベルから働きながらの場合、安易に同時学習して共倒れになるよりは、1科目ずつ確実に進むことをおすすめします。
会計科目の受験資格撤廃の影響について
(国税庁HPより)
会計科目は今が狙い目
令和5年度の税理士試験から、会計科目(簿記論と財務諸表論)の受験資格が撤廃されました。
この改正により会計科目の受験者数は20%以上増加しました。
簿財受験生にとってはオイシイ改正です。
受験者数の増加は税理士試験では、ほとんどなかったことです。
簿財の受験生レベルは低い
会計科目はこれまでもいわゆる記念受験が多く、受験生レベルは税理士試験の中では最も低いです。
そこにさらに今回の改正で
ちょろっと税理士試験でも受けてみるか〜
7月ぐらいから本気で勉強すれば大丈夫っしょ!
こういった分母要因が相当多いでしょう、これはチャンスです。
会計科目の合格率
近年の会計科目は15〜20%の合格率で税法科目に比べても甘めです。
大手の専門学校の定期テストで上位30%以内をキープできれば、合格可能性はかなり高いでしょう。
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筆者の失敗談
日商簿記1級合格からでも2科目はキツイ
筆者は日商簿記1級合格後に簿財同時学習をはじめました。
それと同時に会計事務所に転職。
すべては順調でした。
しかし、それから筆者は簿記論を4回受験することになります(涙
無駄なインプット時間
「お前のセンスがない」と言われればそれまでですが。
筆者は初年度に簿記論も財務諸表論も専門学校の講義を受けました。
週4コマの10時間のインプットです。
簿記論に関しては、ほとんどが日商簿記1級で学習済みの論点。
正直「税理士試験ってこんなもんなの?」と思いました。
アウトプット時間の不足
日商簿記1級持ちのアドバンテージはかなりのものでした。
簿記論に関してはほとんど勉強しなくても最初から上位30%以内。
財表はずっと上位10%前後でした。
(筆者は全経上級も保有していたので、財表の理論もある程度最初から対応できました。)
しかし週4コマのインプットでアウトプット時間が不足し、計算の実力はだんだん下がっていきました。
凡人はコツコツ進むべし
初年度になんとか財務諸表論は合格しましたが。
その後簿記論と消費税法の同時学習をし、2年目は合格科目無し。
相当に凹みます。
理論がある科目と簿記論の同時学習は相当キツいです。
1年で2科目ゲット!!
という甘い誘惑に負けずに、コツコツ1つずつ進むほうが案外近道ですよ。
まとめ
簿記論を残すと税理士試験が長期化します。
簿記論を仕留めてから気持ちよく税法に進むのもありじゃないでしょうか?
筆者は凡人です。
凡人はコツコツ進むことに決めました。
筆者の失敗談がこれから税理士試験に挑戦する方の参考になれば嬉しいです。